ENVIROMENT

これからあるべき
住宅環境について

「健康で快適な省エネ建築を経済的に実現する」ことをモットーにしている松尾設計室の松尾和也さんと横浜市で高気密高断熱高耐震住宅の注文住宅のみならず、分譲住宅をも注文住宅品質で提供するアイズホームの清水貴成さんに、これからあるべき住宅環境について様々なご意見をいただき、君島andとして住まい手に提供する「住宅のあり方」を書いてみました。

松尾 和也(まつお・かずや)  
株式会社松尾設計室 代表取締役

1994年
兵庫県立加古川東高校卒業
1998年
九州大学工学部建築学科卒業(熱環境工学専攻)
エス・バイ・エル入社
1999年
瀬戸本淳建築研究室入社
2002年
プレスト入社
2003年
松尾設計室入社
2005年
「サスティナブル住宅賞」受賞
2006年
松尾設計室代表取締役就任
2010年
パッシブハウスジャパン理事就任

清水 貴成(しみず・たかなり)  
有限会社アイズホーム 代表取締役

1990年 アイズホーム設立。
50年後も心地よく暮らせる住宅づくりを目指し、住宅性能の確かなものを1棟1棟丁寧に建築している。近年では、注文住宅のみならず分譲住宅であっても高性能な品質が必要だという理念で商品開発に余念がない。更には、断熱リフォーム事業も展開し、省エネかつ健康的な住環境をトータル的にサポートしている。

君島 貴史(きみじま・たかし)  
君島and株式会社 代表取締役

1975年東京生まれ。横浜を中心に150棟以上の建築家との住まいづくりに携わる。建築会社の取締役を歴任し、デザインと性能を両立した住宅を提案し続けています。
2020年株式会社andarchiを立ち上げ、2024年君島and株式会社に商号変更。「愉しくなければ家じゃない」をモットーに、住宅ディレクターとWebマガジン「andarchi」の編集を行っています。

住宅性能が高いからこそ
描ける住宅デザイン

住宅性能と住宅デザインの関係はとても深いと考えます。ひとえに住宅性能と言っても様々な観点があります。まずは、耐震性能です。直近では能登半島沖地震など地震大国である日本においては欠かせない住宅性能だと考えます。次に、温熱性能です。単に断熱性能や気密性能を語るだけでは不十分だと松尾氏は言います。窓の配置などによる日射の遮蔽の仕方や換気性能も温熱性能を高める重要な要素です。3つ目に、維持管理性能です。住宅は一生のうちに何度も買い替えるようなものではありません。次の世代に住み継いでいく価値のあるものでなければなりません。長いお付き合いをするために維持管理性能が良いものでなくてはならないと考えています。

耐震性能と
住宅デザインの関係性

住まいは家族の安心感があってこその「愉しい暮らし」が実現すると考えています。耐震等級3(許容応力度計算による)を確保することは家づくり必要条件です。簡易的な壁量計算と許容応力度計算を比べると、木部の構造以上に基礎の構造に大きな差が生じます。基礎の構造からしっかりと計算する許容応力度計算が安心設計の第一歩。耐震性に優れた建築のファサードは、安定性を感じるデザインと共に剛性感をつくり出します。必要な場所に柱や壁を配置しつつ、空間的スケールを大きく感じさせる設計を両立することが設計者には求められるのでしょう。いくら耐震等級が高くても、閉塞感のある住みづらい空間設計では暮らしを愉しむことはできないのです。

温熱性能と
住宅デザインの関係性

温熱性能を高めると愉しく暮らすための設計の可能性が広がります。設計は温熱性能を重視せず意匠的に優れた建築を計画することはできるかもしれません。しかしながら、環境を低減し、日々のタンニングコストを抑えた上で快適な住空間が確保されていないと「愉しい暮らし」を達成できないと私達は考えています。愉しい暮らしの可能性を広げる為にも、温熱環境に対する性能の確保は必須と考えています。そこで温熱性能を活かした空間デザインとしては、吹き抜けや間仕切りの少ない開放感のある設計が可能となります。吹き抜けを配置することで、必要な日射を空間全体に取り込み、一日の光の移ろいを愉しめるリビング空間を計画します。間仕切りが少ないことで空間全体の空気の流れが良くなり、少ないエアコンの台数で全館空調が可能となります。リビング階段や玄関の土間空間なども居住空間として活用できライフスタイルの幅が広がります。

維持管理と
住宅デザインの関係性

「お気に入り」が長く続く為にも維持管理性能は高くなくてはなりません。維持管理と聞くと「長持ちする建材」と思われがちですが、永久に劣化しない建材が無い以上、将来のメンテナンスのタイミングは考えなくてはなりません。もちろん経年劣化しやすい材料を積極的に選択することは論外ですが、適切なメンテナンス計画に則った建材のチョイスが必要だと考えています。私たちはモノを長く使用したいと思った時、適時適切にメンテナンスを行います。そのメンテナンスをする動機が「お気に入り」だと思っています。経年劣化に強いということだけで選択せず、好きなデザインや好きなマテリアルも念頭に置きながら選択することも大切なことだと思っています。住みやすく、デザイン的にも好みで、暮らしが愉しいことが「お気に入り」であり続ける条件でしょう。その「お気に入り」が長く続く設計計画を一緒に考えていけたらと思っています。

温熱性能はどこまで
上げればいいの?

Ua値、C値、HEAT20、断熱等級????言葉の意味も、数字の意味も良くわからない。初めての買い物だから良いものを作りたいけど、価格も余分にかけたくない。車を買う時、公道で時速200キロで走れる性能は要らないけど、「好みのデザインで、快適に、低燃費で、楽しく走りたい」。そんなスペックが住まいにもあれば良いのだと思う。どんなに高性能でも無暖房で少々の寒さを我慢しながら暮らすのなんてありえない!エアコン一台の電気代で全館冷暖房※できて、大空間のリビングで家族楽しく、所有感の高いデザイン性のある暮らしがちょうど良いと思います。君島andは、Ua値0.46以下、C値0.5以下のHEAT20 G2グレード+αが適正だと思います。
断熱性能は、「Ua値0.46以下」を目指すと良いでしょう。神奈川や大阪、福岡などの温暖な地域では「Ua値0.46以下」を目指してみると、イニシャルコストとランニングコストのバランスが良い住宅となると考えます。過度な性能を求めて無駄なコストをかけないようにすることがポイントとなります。地域に合わせた適度な性能とデザイン性が「楽しい住まいづくり」には必要なのです。「吹き抜け」や「リビング階段」など空間設計は、住宅性能が低いと「寒い、暑い」の温床になり楽しくないですね。大空間の楽しい生活空間は、高い住宅性能を土台に成り立ちます。家じゅうが、隅から隅まで均一な温度環境だから実現するライフスタイルがあります。住宅性能を上げて一定の温度が保たれる環境だと、むしろ「吹き抜け」や「リビング階段」欲しくなります。家全体の空気が効率よくサーキュレーションするためには上下のつながりはあったほうが良いのです。住宅性能を向上させた家づくりは、設計の発想が変わり空間同士の連続性が生まれ、廊下などのデッドスペースが無くなり「小さく建てても広く住める」のです。
※エアコンの台数はプランによって変わります。